法廷紛争問題、敷金判例集・敷金小額訴訟-賃貸経営博士-

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法廷紛争問題、敷金判例集・敷金小額訴訟

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賃貸借契約で最も問題件数が多いひとつに、「敷金」に関することがあげられるでしょう。 金銭的な問題であるということに加え、法律地域慣習を含め一定の線引きが難しいということから、 退去後の問題として引きずってしまっているのが現状のようです。
敷金の基礎知識についてはこちら

原状回復にかかわる判例(原状回復をめぐるトラブルとガイドラインより)

「ガイドライン」とは原状回復にかかわる契約関係、費用負担等のルールのあり方を明確にして、 賃貸住宅契約の適正化を図ることを目的に、当時の建設省(現国土交通省)が 平成10年3月に取りまとめて公表されたものです。

原状回復をめぐるトラブルは今も尚、増加し続けている状況にあります。 このトラブルの未然防止と円滑な解決のために賃貸人・賃借人双方があらかじめ理解しておくべき一般的なルールとして ガイドラインが利用されるようになっています。

下記の判例については様々な、契約内容、物件状況などにより生じたものを取り上げてその判決の要旨を揚げています。 契約のあり方、一般的な考え方を理解した上で、賃貸人・賃借人双方の見解から、参考にしてみて下さい。

通常の使用による汚損・損耗は特約にいう原状回復義務の対象にはならないとされた事例

事案の概要(原告=賃借人A 被告=賃貸人B)

賃借人Aは賃貸人Bから昭和62年5月本件建物を賃料月額12万円で賃借し、その際Bに 敷金24万円を差し入れた。 平成5年4月本件契約は合意解除され、同日AはBに本件建物を 明渡したが、 Bが敷金を返還しないので、その変換を求めた。

B葉本件建物の明渡しを受けた後、畳の裏替え、襖の張り替え、ジュータンの取り替え及び壁、 天井等の塗装工事を行い、その費用として24万9780円を支出したと主張した。 なお、本件契約にはAはB似たいし、契約終了と同時に本件建物を原状に回復して (但し賃貸人の計算に基づく賠償金をもって回復に替えることができる)、 明渡さなければならないという特約があった。

これに対して原審(豊島簡判、判決年月日不明)は、Aの主張を認容しBが控訴した。

判決(控訴審)の要旨 [敷金24万円/返還24万円(全額)]

これに対して裁判所は、

(1)本件特約における「原状回復」という文言は、 賃借人の故意、過失による建物の毀損や通常でない使用方法による劣化等についてのみ その回復を義務付けたとするのが相当である。

(2)Aは、本件建物に居住して通常の用法に従って使用し、 その増改築ないし損壊等を行うこともなく本件を明渡したが、 その際又は明渡し後相当期間内にBや管理人から修繕を要する点などの指摘を受けたことはなかった。

(3)Aは、本件契約を合意更新するごとに新賃料の1ヶ月分を香辛料として支払ったが、 Bは本件建物の内部を見て汚損箇所等を確認したり、Aとの間でその費用具単について話し合うことはなかった。

以上からAは本件建物を通常の使い方によって使用するとともに、 善良な管理者の注意義務をもって物件を管理し、明渡したと認められるから、 通常の用法に従った使用に必然的に伴う汚損、損耗は本件特約にいう原状回復義務の対象にはならないとし、 Aの請求を認容した原判決は相当であるとして、Bの請求を棄却した。

東京地裁 平成6年7月1日

原状回復の特約及び別記の「修繕負担項目」により損耗の程度に応じた賃借人の負担を認めた例

事案の概要(原告=賃借人A 被告=賃貸人B)

賃借人Aは昭和63年9月16日、賃借人Bに対し、本件建物を賃料月額21万7千円、 共益費月額1万8千円で賃貸した。本件契約には、原状回復義務として、契約終了時には 賃借人は自己の費用をもって遅滞なく原状回復(具体的内容は契約書末尾に記載)の 処置をとり賃貸人に明渡す旨の条項があった。

平成4年5月28日、Bは本件建物を退去したが、AはBが平成2年6月分以降の賃料及び共益費を 支払わず、また、Bが退去にあたり何ら補修をしなかったため、 Aがカーペットの敷き替え、 壁等のクロスの張替え等の原状回復康治費用 (65万6785円)を支払ったとして、Bにそれらの支払いを求めた。

判決(控訴審)の要旨 [敷金0円/追加支払い35万8632円]

これに対して裁判所は、原状回復費用について、

(1)カーペット敷き替えは、それまで行う必要はなく、クリーニング(1万5000円)で十分である。
(2)クロス張替えは壁・天井ともにやむをえない(26万8000円)が下地調整及び残材処理は賃借人に負担させる根拠はなく認められない。
(3)畳の表替えは、取替えではなく裏返しで十分だった(2万1600円)。
(4)室内クリーニングは、700円/㎡として認められるべきである(5万4082円)が室外クリーニングは契約の語彙項目にないのでBに負担させるべきではない。

以上から、BはAに35万8682円を支払うよう命じた。
なお、Bが一審敗訴部分の取り消しを求めて控訴した。 控訴判(東京高判平成7年12月26日判決の詳細不明)は、Bの控訴を棄却した。

東京地判(平成6年8月22日)判例時報1521-86

通常損耗を賃借人の負担とする特約が否認された事例

事案の概要(原告=賃借人A 被告=賃貸人B)

賃借人Aは、平成8年3月、賃貸人Bと月額賃料12万円余で賃貸借契約を締結し、 敷金として37万5000円を差し入れた。 本件契約書には、「借主は、本契約が終了したときは、借主の費用をもって本物件を当初契約時の 原状に復旧させ貸主に明渡さなければならない」という条項(21条)があった。 また、Aは媒介業者から「本物件の解約明け渡し時に、借主は契約書21条により、 本物件を当初契約時の状態に復旧させるため、クロス、建具、畳、フロア等張替え費用及び 設備器具の修理代金を実費にて生産されることになります。」と記載された覚書を受領し、 署名押印して媒介業者に交付した。

Aは平成10年7月Bに本物件を明渡し、本件賃貸借契約は終了した。 ところが、Bは本件契約に基づく原状回復費用として、通常損耗分も含めて、敷金を上回る 支出をしたとして、敷金の返還を拒んだため、Aは通常損耗に対する補修費用は賃借人の 負担とはならないとして、24万4600円の返還を求めて提訴した。 これに対し、Bは、Aには本契約書21条及び覚書に基づき要した、壁・天井・クロス及び障子の 張り替え、洗面化粧台取り替えならびに玄関鍵交換費用等の合計48万2265円を支払う義務が あるとし、この修繕費用等請求権をもって敷金返還請求権を総裁するとの 意思表示を行い、 さらに反訴請求としてAに対し、修理費用請求権残額等合計10万7265円の支払いを求めた。

一審(豊中簡裁)及び二審(大阪地裁)において裁判所はいずれも、 本件契約書及び覚書の記載は、通常損耗による原状回復義務を賃借人に負わせるものと 判断してAの請求を棄却した。Aはこれを不服として上告した。

判決(控訴審)の要旨 [敷金24万円/返還24万円(全額)]

上告審において今冬裁判所は、次のような判断を下した。

(1)建物賃貸借において特約がない場合、賃借人は賃借人が付加した造作を取り除き、通常の使用の限度を超える方法により賃貸物の価値を減耗させたとき(例えば、畳をナイフで切った場合)の復旧費用を負担する義務がある。
しかし、賃貸期間中の経年劣化、日焼け等による原価分や、通常使用による賃貸物の減価(例えば、冷暖房機の減価、畳の擦切れ等)は、賃貸借本来の対価というべきであって、賃借人の負担とすることはできない。

(2)もし、上記の原則を排除し通常損耗も賃借人にふたんとするときには、契約条項に明確に定めて、賃借人の承諾を得て契約すべきであるが、本賃貸借契約書21条の「契約時の原状に復旧させ」との文言は、契約終了時の賃借人の一般的な原状回復義務を規定したものとしか読むことはできない。

(3)また、本件覚書は、本件契約書21条を引用しているから、これを超える定めをしたとは言えず、通常損耗を賃借人が負担すると定めたものとは解されない。

以上から、原判決の判断は契約の解釈を誤ったものであって、破棄を免れない、そして賃貸人の支出した費用が通常損耗を超えるものに対するものであったかどうかについて審理する必要があるとして、本件を原裁判所に差し戻した。

大阪高判 平成12年8月22日/一審・豊中簡判 平成10年12月1日/二審・大阪地判 平成11年10月22日
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