食べるための料理のことを考えた台所のあり方を追及できる建築家|株式会社FGH 執行役員 中村彰男

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ロシア式サービスの浸透  住宅産業から住居産業へ ⑥

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その他識者 株式会社FGH 執行役員 中村彰男

やや偏屈なところも、つむじの曲がったところもありますが、情報量に関してはそこそこの自負がございますので、私のコラムからは、不動産投資について、何らかのヒントを拾っていただけるのではないかと思っております。

食べるための料理のことを考えた台所のあり方を追及できる建築家

料理って、食べるためにあるんじゃないの、と思われた方も多いでしょうが、洋の東西を問わず、見るための料理というものは存在していました。
 
わが国にあっては、室町期に成立した本膳料理がそれで、将軍来臨における供応料理を起源とし、見た目は豪華でありながら、実際に食べられたものはごくわずかだと伝えられます。
 
この、とりあえず卓上を賑わわせておこうという心理傾向は、今もお正月の料理に引き継がれていますね。
 
翻って、西洋料理の雄であるフランスでも、大革命くらいまでは、その日に供する料理をすべてうず高く盛りつけ、麗々しく飾りたて、ゲストはそれを勝手に取り分けるというのが饗宴のしきたりでした。
 
視覚を満足させることが目的の大きな部分を占めているので、空いた器が下げられると、すかさず次の料理が現れ、結果として膨大な無駄が生じるばかりでなく、長時間置きっぱなしにされているので、冷めてしまったり、乾いてしまったりすることは避けられません。
 
それではせっかくの料理が美味しく食べられないではないか、と考えたのが、当時の駐仏ロシア大使で、故国の給仕方式に倣い、冷たいものは冷たいまま、温かいものは温かいまま食べられるよう、一皿ずつのサーブを導入したので、これをロシア式サービスと呼ぶようになりました。
 
今では、ちょっと気の利いたレストランであれば、すべてこの方法でサーブされていますから、美味しいものを食べようと思うなら、あるいは提供しようと思うなら、料理を一皿ずつ順番に供するのが理にかなっているはずです。
 
さらにいえば、美味しさとは味覚だけに左右されるものでもないので、目の前でホストが戦争を繰り広げていては、ゆっくり味わう余裕だって、制限されてしまうのが人情でしょう。
 
台所の分離独立をしつこく訴えるゆえんです。
 
グルメ番組やグルメ本がこれだけ氾濫しているのに、美味しいものを美味しく食べるための基本的な心がけが、現在の住宅の設計思想からは根本的に抜け落ちているように思えてなりません。
 
食べるための料理のことを真剣に考え、台所のあり方を心底追及できる才能と、建築界への影響力とを併せ持った建築家は、はたしていつになったら現れるのでしょうか。
 

公開日:2017年2月22日

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