思うところ85.「フリーレント」~事業用不動産の賃貸借における貸主の借主に対する「助け舟」とも称すべき「フリーレント」について~|オフィスランディック株式会社 代表取締役 齋藤裕

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思うところ85.「フリーレント」~事業用不動産の賃貸借における貸主の借主に対する「助け舟」とも称すべき「フリーレント」について~

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不動産会社 オフィスランディック株式会社 代表取締役 齋藤裕

スタッフが 30 分以内に急行できるエリアを重視する地域密着型の不動産会社代表。営業エ リアの絞り込みは、良質なサービスを提供する為の「選択と集中」であり、建築業界で言う ところの「多能工」を自負する。

事業用の不動産(事務所・店舗等)のテナント募集物件に入居希望者が賃借の申込を決断するにあたり、入居当初の一定期間を無償(=「フリーレント」)とする条件が付されることがある。

思うところ85.「フリーレント」

事業用の不動産(事務所・店舗等)のテナント募集物件に入居希望者が賃借の申込を決断するにあたり、入居当初の一定期間を無償(=「フリーレント」)とする条件が付されることがある。これを単なる「サービス」の一種、時に借主や仲介人の「甘え」に過ぎないと考える貸主が少なくないので、そういった取引の実情を少し解説しておきたい。

地域によって商慣習は異なるが、東京都心部では、用途を居住用とする少額価格帯の賃貸借契約の場合、借主側の解約予告を1ヶ月前とするのが一般的である。よって、居住用の住替えならば、従前の住まいの退去(解約)時期と新居の契約始期の微調整で済むことが多い。そもそも住居系の人気物件ともなれば、契約始期で我儘を言い過ぎると貸主に相手にして貰えない。(例えば、空室の物件に対して「入居は半年後希望」といった無理難題)貸主の視点(利益)で考えれば、賃料発生がより早い商談が優先されてしまうのは致し方ないのである。

ところが、用途を事業用として高額価格帯の賃貸借契約を締結する場合、唐突にテナントに退去されると貸主が受ける経済的損失も大きいことから、解約予告を3ヶ月前~6ヶ月前とすることが多い。少しでも空室期間を縮小すべく、次なる入居者の募集活動に早めの着手をしたいとの思惑もあるが、多額の保証金返還の資金手当やら、原状回復工事の手配やら、貸主側にも何かと諸事情がある。

一方、借主が背負うことになる移転先と現行賃料の長期二重払いは重く耐え難い。かと言って移転先を確保もせずに軽率に解約予告を出す訳にもいかない。よって、賃料の二重払いの回避と移転先確保を両立させる為には、自ずと「フリーレント」を移転先賃借の付帯条件とすることになるのである。また、会社代表が事業所の移転を決断しても、社内的合意形成から取引先への移転案内、免許事業者については官公庁への届出等に至るまで膨大な作業・手続きがあって相当な準備期間を要するものだ。単なる「甘え」から「サービス」を要求しているのではないことが多いのである。勿論、移転に対する何らかの強い動機付けがあって、先に解約予告を出してから移転先を探す経営者もいるが、限られた期間であると理想的な移転先を確保できる保証は無い。

いずれにせよ、「フリーレント」のあり方は、需給バランスにより大きく左右される。賃貸物件が供給過多の時は、賃料値引きや長期のフリーレント期間を設けて「優良テナント」の争奪戦になるし、逆に賃貸物件が不足している時は、「優良賃貸物件」が争奪戦になるから、「フリーレント」の条件を付して申し込んでも断られることが多い。

尚、フリーレント期間中と謂えども、共益費(管理費)については、テナント負担とするのが一般的であることを予備知識としてお持ち頂き、どうか仲介人を困らせないで欲しい。因みに、事務所需要の低迷期においては、さすがに水道・光熱費まで貸主が負担することはないだろうが、賃料・共益費の全額を免除(完全フリーレント)とすることは稀にある。

また、フリーレント期間を設けた賃貸借契約を締結する場合に貸主が留意すべき点は、期間満了前の解約について違約条項を付すべきことである。極論すれば、フリーレント期間を2ヶ月与えておきながら、解約予告を3カ月前とする賃貸借契約を仲介人に賃料の1ヶ月分のAD(広告費)を支払って成約しても、契約と同時に解約予告を通知されたならば、理論上は貸主の利益が皆無となる契約になってしまう。(実際にその様な馬鹿げた契約をする仲介人はいないが「短期解約違約条項」の記載漏れは見た事がある。)やはり、「フリーレント」は賃貸借期間満了を大前提にした貸主の借主に対する「助け舟」と解釈すべきなのだと思う。

「フリーレント」の濫用が目に余るケースもある。投資用不動産(ビル・アパート・マンション等の収益物件)をより高値で売り抜けようと、売主(=貸主)が過剰なフリーレント期間を設けて相場より高い賃料でテナントを誘致し、見せかけの高利回りを作為的に演出するケースである。経験豊富な投資家がそれを見抜けないとは思わないが、不動産投資の初心者は十分に注意されたい。売主の提示するレントロールに相場を逸脱した高値を感じたならば、賃貸借契約(原契約)に過剰なフリーレント期間が無いものか疑ってみるべきと思う。

「フリーレント」に全く応じない貸主も多く、「無償」に対する嫌悪感を貸主に抱かれるのを恐れ、それを提案すらしない仲介人もいるが、「無策」が原因で空室期間が長引いたり、契約始期を先延ばしすることには貸主の「実益」が無い。貸主・借主・仲介人各々が良識を持ち、事業用不動産の賃貸借における「フリーレント」なる商慣習の「心ある運用」を心掛けたいものである。

公開日:2020年10月20日

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