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前所有者が病死した場合は事故物件・・・?はじめての賃貸経営【第8回】

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弁護士 エジソン法律事務所 大達 一賢

相続や不動産案件、離婚、交通事故等個人の方から企業法務も含め、幅広い案件を専門家としての知識と経験を生かして取り扱っています。依頼者目線で正当かつ最大限の利益を実現すべく、慎重かつ柔軟に考え、日々業務に取り組んでいます。

自然死には告知義務がない? 困ったときはやっぱり大達弁護士!

 困ってしまったXさんは、伝家の宝刀(?)大達弁護士のもとへ駆け込みました。
 
 まず、XさんがL社の承諾を得ずに契約を解除するには、売買の目的物であるアパートに隠れた瑕疵があり、契約の目的を達することができない場合(民法570条、566条)である必要があります。

 しかし、アパートには物理的な瑕疵はなく、あるのは「こんなアパートには住みたくない」と思わせるような「心理的な」瑕疵です。
では、そもそもこのような心理的瑕疵は、民法570条で言うところの「隠れた瑕疵」に当たるのでしょうか。

 この点について、大阪高等裁判所は、昭和37年6月21日判決で、「売買の目的物に瑕疵があるというのは、その物が通常保有する性質を欠いていることをいうのであつて、右目的物が家屋である場合、家屋として通常有すべき『住み心地の良さ』を欠くときもまた、家屋の有体的欠陥の一種としての瑕疵と解するに妨げない。」として、心理的瑕疵も民法570条の「瑕疵」に当たると判断しています。

 そして、心理的瑕疵の該当基準として、「建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景など客観的な事情に属しない事由をもって瑕疵といいうるためには、単に買主において右事由の存する家屋の居住を好まぬというだけでは足らず、さらに進んで、それが、通常一般人において右事由があれば『住み心地のよさ』を欠くと感ずることに合理性があると判断される程度にいたつたものであることを必要とする。」と判示しています。必ずしも自殺や殺人といった事情がなければ心理的瑕疵には該当しないと明示されているわけではありません。

 具体的には、事件の重大性、経過年数、買主の使用目的、近隣住民に事件の記憶が残っているか否か、買主に損害が生じているか否か、などを総合的に考慮して、心理的瑕疵の有無とその程度を判断することになります。
 
 今回のXさんの件では、自殺や殺人事件などとは違い、病死であるため、事件の重大性はそこまで大きくはないと言えます。

 また、賃貸借の事例ではありますが、自然死は原則として「心理的瑕疵」には当たらない、とした裁判例もあります(東京地裁判決平成18年12月6日)。

 しかし、当時は遺体の発見が遅れたことから、近所では騒ぎになっており、しかもそれは半年前の出来事であって、警察消防も詰めかけてしまっているため、近隣住民の事件の記憶は、未だ強く残っているといます。
 また、今回のアパートはXさんが賃貸用で購入したものであるため、心理的瑕疵は入居者や入居希望者に影響を与えることになり、実際に、立地条件がいい物件であるにも関わらず空室率は33%であるという状態が生じています。
 
 これらの事情を総合的に考えると、今回のXさんが購入したアパートには心理的瑕疵が存在したといえる可能性も否定はできません。

 そのため、ある程度の損害賠償請求は認められる可能性はありそうです。
 一方、売買契約の解除については、アパートに居住者が既におり、新規入居者も決まっていることを考えると、民法570条が準用する民法566条でいう「契約をした目的を達することができないとき」には当たらず、解除をすることまでは難しいように思います。
 
 また、不動産の売主の告知義務(宅地建物取引業法35条)違反を理由に損害賠償請求をすることが考えられますが、不動産取引実務上、自然死については基本的に告知義務がないとされていますので、この主張は難しいように思えます。
 

公開日:2017年1月6日

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