第4回 弁護士が教える公正証書遺言の書き方-残された人たちが困らないための相続対策-
相続や不動産案件、離婚、交通事故等個人の方から企業法務も含め、幅広い案件を専門家としての知識と経験を生かして取り扱っています。依頼者目線で正当かつ最大限の利益を実現すべく、慎重かつ柔軟に考え、日々業務に取り組んでいます。

前回までは、相続人がいないAさんが亡くなった場合、相続財産がどうなってしまうのか、という点を中心に話してきました。今まで私のコラムをお読みいただいた方々には、「相続人がいない人が財産を残して亡くなってしまうと、けっこう大変なんだなぁ…。」ということがおわかりいただけたことと思います。
なので、今回は自分に相続人がいない場合にはどうしておくべきなのか、という点について、具体例を挙げながらお話ししていきたいと思います。
弁護士に相談だ!
今回、知人であるAさんが亡くなったことを知った東京都千代田区在住のBさん(88歳)は、自分にも相続人となるような親族がおらず、特にお世話になっている人もいないことから、自分が亡くなった後のことについて不安になりました。
しかし、具体的にどうしたらいいのか、いまいち思いつきません。
そこで、相続案件に詳しいと噂のエジソン法律事務所の大達弁護士へ相談しに行ってみることにしました。
爽やかな笑顔とともに現れた大達弁護士は、Aさんの件をはじめとして数多くの相続関連事案を担当した経験から、3つの対策方法をBさんに伝えました。
その1 遺言を書くべし
まず、1つ目の方法として「遺言をすること」が挙げられます。
一般的な理解として、遺言とは相続人、たとえば子が複数いるような場合に、長女には自宅を、長男には銀行預金を・・・といった形で、「相続人の間の相続割合を書面で表すもの」というイメージが強いと思います。
しかし、相続人がいない場合でも遺言を書くことが出来ます。むしろ、相続人がいない場合にこそ、遺言を書くべきであると言っても過言ではないと思っています。
具体的には、どの財産を誰に渡したいか、という点を書くことが必要になります。そうすることによって財産を遺贈することができ、受贈者(遺贈を受けた人)が遺贈を放棄しない限りは、相続財産が宙ぶらりんになってしまうことは避けられます。
ただ、ここで1つ注意しなければならないことがあります。それは、「遺言には決められた方式があり、それに従わなかった遺言は無効となってしまう」ということです。
この「決められた方式」というのは、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つであり、民法に規定されています。
自筆証書遺言(民法968条)とは、遺言者が、遺言の全文、日付、氏名を自書したうえで、これに押印した遺言を言います。
自書とは、自分で手書きすることを言いますので、ワープロ等の機械的に印字されたものでは無効となってしまいます。また、たとえ一部であろうとも、代筆は認められません。
実際、この自筆証書遺言の方式に違反した遺言がなされた結果、親族間などで紛争が発生し、裁判沙汰になるということが往々にして発生するので、自筆証書遺言を書く際には、しっかりと方式に沿っているか確認する必要があります。
公正証書遺言(民法969条)とは、
①証人2人立ち会いのもと、
②遺言者が公証人に遺言の内容を口授し、
③公証人が遺言者の口述内容を筆記し、それを遺言者及び証人に読み聞かせるか閲覧させ、
④遺言者と証人が、筆記内容が正確なことを承認したうえで、各自それに署名、押印し、
⑤公証人が、その証書が①~④の方式に従って作ったものである旨を書いたうえで、署名、押印する、という形式の遺言を言い、公証役場で作成することになります。
この説明を見ただけではとても複雑そうに見えますが、全国各地にある公証役場に行けば、細かな手続きは公証人がしてくれるので、そこまで難しいものではありません。
とはいえ、公証人は多忙であり、遺言者の意向を隅々まで汲み取ってくれるとは限りませんので、実際の作成にあたっては、弁護士に依頼の上、綿密に打ち合わせを行い、公証役場の手配もお願いするというのがよいでしょう。
実際、公証人という言わば公正証書作成の専門家が作成するものなので、自筆証書遺言のように方式違背となることは基本的にないため、遺言作成の場合には公正証書遺言によるべきだと考えています。
秘密証書遺言(民法970条)とは、遺言の内容を誰にも知られたくないような場合に用いる方式ですが、今回はあまり関係なさそうなので割愛します。
これらいずれの方式の遺言によっても、遺言者は遺言の内容を実現するための役割を担う遺言執行者を選任することがよいでしょう。
公開日:2016年6月1日
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