賃貸経営をしていた物件に建替案件が生じたらどうなるのか?~結果としての節税あれこれ~|Hisashi

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賃貸経営をしていた物件に建替案件が生じたらどうなるのか?~結果としての節税あれこれ~

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大家 Hisashi

職域年金受給1年前となり、やっと「少しはラクになるかな」と、一息吐いています。サラリーマン大家→個人事業主→会社設立と、書けば順調に見えるものの、「いつもカツカツ」で生きてきた気がします。これまでの経験を、節税面から振り返ってみようと思います。

 筆者の住んでいる自宅から数軒のところに、自営の士業さんのお宅があります。別に看板を掲げているでもなく、それと判る事務所然とした家を構えているでもなく、日常生活では同じ町内会所属の云わばごくフツーの「ご近所さん」です。
 歩いて10分ほどの場所にマンションの一室を取得し、そこを仕事場にされているようです。
 そのマンションが、10年くらい前だったか建替となりました。長らく地元で開業して顧客も付いているのでしょう、しばらく手近な賃貸マンションに事務所を移し、新しく建替となった物件で元通りのお仕事をされています。
 こうした建替案件が、賃貸用物件に生じたらどうなるのか?

<47> 宝くじを外れくじにしないために

 マンションなどの共同住宅物件の建替は、所有者の何割の賛成が必要だとか、費用の分担がどうとか、さまざまな課題が生じますが、大抵は大手の、あるいは専門のディベロッパーに委ねてコトが進みます。何よりも大手は資金を持っていること、そしてその資金が担保されていないと自治体が建設の認可を出さないからです。

 通常、建替にあたっては、元の所有者が持っていた権利(床面積)は確保される(等価交換)というルールが一般的です。
 また、敷地や容積率に余裕がある場合には、新しく建てた物件の増床分を販売し、その売上を見込んで建設資金に充て、なるべく権利継続保持者の負担が生じないような計画を立てます。

 立て替えようとする物件が賃貸物件主体の建物だと、2000年代に入った頃話題になったワンルーム規制に縛られ、同じようなワンルーム投資型マンションには建て替わらないと思われますが、そこはディベロッパーが条例や建築法の隙間を研究して何らかの提案を出してくるでしょう。

 賃貸経営をしていた物件が建替となると、その間の家賃収入が途絶えますから、ディベロッパーは建替直前に取れていた賃料を参考に、建替期間の損失を補填します。
 当然、「権利を持ち続ける」という意思表示があるからこそのリカヴァリーですが、もちろん、「この際手放す」という人もいます。
 中古であろうが新築であろうが物件の取得に借入を利用する人は常に存在しますが、例えば建替前の物件を借入利用で取得していた場合、第<45>回で述べたような月4,000~5,000円の収益にしかならない場合には毎月の返済を重く感じ、売却/一括返済/新たな投資先を摸索、という選択をする人もいるでしょう。

 建替後の物件は、建替前と全く同規模の区分で設計ということはありませんから、上述した

>元の所有者が持っていた権利(床面積)は確保される(等価交換)

というルールを基に、増床分を現金換算して、
  「300万円上乗せ分を払えば、新築の○号室を取得できる」
というような段取りになっていきます。元々持っていた物件の規模や新築物件の「品揃え」によっては、
 「広めの1戸が、ややコンパクトな2戸なった」
というような場合も有り得ます。25㎡で100,000円の家賃が取れていたオーナーが、20㎡の区分2戸と交換し、70,000円×2戸で140,000円の収入にアップ、という選択肢は十分に有り得る話です。
  
 筆者にも似たような経験があり、筆者の場合は
 「等価交換で新築物件を取得後、すぐに売却」
という方法を採りました。新築物件がどんな価値を付けるかは「建ってみなけりゃ」分からなかったわけですが、前述の

> 20㎡の区分2戸と交換

に見合うような物件は、売却した代金でより良い条件のものが探(捜)せるだろう、と予測しました。新築物件は綺麗で気持ちの良いものですし、俗に言う「新築プレミアム」で賃料も多めに取れるかも知れませんが、経年とともに色褪せて、結局は物件の立地や周辺の生活利便性に見合う賃料に収斂されていきます。
 未来永劫賃貸経営を続けなければならないわけでもない個人投資家にとっては、ある時点で不動産投資はそこそこに止めて他の事業に乗り出す、という選択肢もあるでしょうし、売却で得た手元資金を借入の返済に充て、人生全般の負担を軽くする、という選択肢も有り得ます。
 では、筆者の場合、どんな経緯を辿ったのか、要点のみ簡単に。

<建替前物件を法人所有へ移転>
 建替再建築の話が出たのは、新築竣工の3~4年前。物件の取得は、筆者が早期退職をする頃、まだサラリーマン大家の頃でしたが、建替再建築の話が出た頃は法人も作っていましたから、権利を移しました。
 法人は赤字を繰り越せる年数が多い、というのが根拠です。

<青色欠損金の積み増し>
 個人事業も法人も同様だと思いますが、「経費を増やして収益を減らし節税につなげる」際のポイントのひとつは減価償却費です。
 「手元からお金が出ていくわけでもないのに経費計上できる」
というのは、当選金に税金が掛からない宝くじのようなもの。物件売却で1,000万円の収入があっても赤字が1,000万円積み上がっていれば、相殺されて所得はゼロです。手元からお金が出ないで赤字にできるのですから、実際に収入があれば返済とかに廻さず帳簿上の相殺を施し、その収入が手元に残る、ということです。
 法人で計上していた事業用資産も、可能なものは定率法に切り替えて減価償却費を多く取れるように変更しました。

<等価交換実務>
 上述の

> 建替直前に取れていた賃料を参考に、

などの算定は、土地家屋調査士等の専門家が関わって、寿司屋ならぬ「時価」をはじき出して設定されていきますが、元々権利を有していた建替前物件と同等の床面積は確保できます。
  筆者の場合、元の物件は16㎡程度のワンルーム区分でしたが、建替後は小さい部屋でも最低20㎡以上になるとのこと。自治体のワンルーム規制が効いているのでしょう。
 その増床分200万円余りを払い、一部屋を取得しました。

<売却の実務>
 ディベロッパーは、建替新築を販売活動しますが、その情報はレインズに載ります。
 媒介業者は、そこにある情報を元に、
 「販売元が○○万で売りに出していますから、○万くらい下げたらす
ぐに買い手が付くのでは?」
などとと提案してきたりしますが、重要なのは新築案件を手掛けたことがある業者か、あるいはそうした業者によく通じている業者か、ということ。
 筆者の場合は、売却を相談した媒介業者が、レインズに晒さず、水面下で買い取り業者に渡りを付けてくれました。

<事前・事後>
 建替前物件の筆者の取得状況は、

・築20年、16㎡ワンルーム、取得価額1070万円、借入利用。

 建替までの間の状況変化は、

・借入返済完了、法人設立、所有権を法人へ移転

 建替等価交換取得物件は、

・売却額3,000万円余り。

 その後は、

・抱えている借入の一部繰上返済に充当

という顛末に収まりました。売却時に積み上がっていた欠損金は1,600~1,700万円。3,000万なら十分お釣りが来ます。
 個人所有のままだったら、1,070万+増床分200万の1,300万ほどの元手が3,000万になったのだから結果オーライでしょうが、売却に伴う分離課税などを考えると、プラスはどうなっていたか?
 法人の場合は不動産物件の売却でも分離(課税)前に損益通算ですから、今回述べた事例のオペレーションは「法人に移して」のアクションが良い結果を得たのかな?  と思っています。

<宝くじは買えるか>
 物件を捜す時に、修繕積立金がどれくらい貯まっているか、エレベーターの交換工事が終わっているかなどの重要事項を調べますが、建築の知識があれば、

・築年、容積率などから「近い内に建替があるかも?」とか、
・再開発指定地域だから該当エリアの物件を、

といった捜し方は、不可能ではないかも知れません。
 が、それを狙って「ビンゴ!」の物件に行き着くかは、効率の面からどうかな?  と思います。筆者の場合、たまたま上述のような経緯を辿りましたが、当該物件そのために法人を設立したわけではありませんし、当該物件に限らず以前から借入全般に対して一部繰上返済を施し、債務の軽減には努めていました。
 3,000万円の売却も、通帳上の動きだけで、すぐにそのまま返済の圧縮に廻る、という一種の潔さに終わりました。

 筆者個人としては、年齢的に「もっと投資拡大、いい物件はないか?」といったエネルギーは下火になりつつあり、まあ、これはこれでいいのかな、と考えています。

公開日:2021年9月1日

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