個人事業主の節税・税金対策!給与所得控除と個人事業主控除の考え方

職域年金受給1年前となり、やっと「少しはラクになるかな」と、一息吐いています。サラリーマン大家→個人事業主→会社設立と、書けば順調に見えるものの、「いつもカツカツ」で生きてきた気がします。これまでの経験を、節税面から振り返ってみようと思います。
青色事業者特別控除が65万円計上できることは有名ですが、給与所得控除も「65万円に満たない場合には65万円」です。その給与収入には年収が上がるに従い控除額も増える仕組みがありますが、一方の個人事業者にはそうした段階的な仕組みは無く、個人事業主控除が一括290万円の枠で用意されているだけです。
ゆえに、売上(収入)の拡大に伴い、給与所得控除並みの手残りを確保する意識と智恵が必要になります。
<25> 収支管理(家計簿)ソフトは必須(2)
(承前)
前(第<24>)回は、サラリーマン大家が、本業の傍ら不動産賃貸を経営する場合を想定した収支管理でしたが、今回は勤め先の給料がない場合の話です。
本業(主たる収入)が勤め人でない場合、法人でなければ、一般的には個人事業主となりますが、事実上のモグリの方もいるかも知れません。例えば、親からの相続物件で賃貸収入があり、確定申告などの知識も無いまま、つつましく暮らせてしまっている老齢の方などが考えられます。
遺族年金(非課税)と、僅かな家作からの家賃収入で、合わせても年収的に課税対象に届かないようなお年寄りは、結構いらっしゃるのではないかと想像されます。
ただ、ここでは、青色事業者届を出し(前提として開業届も)、控除も使う立場の個人事業主を想定して書きます。
65万円を起点として
専業主婦(つまり夫の扶養になっている立場、男女逆でも可)が、アルバイトをして家計を補う場合、基礎控除38万円と給与取得控除65万円を合算した103万円以内であれば、税金が掛からないのは現代人の常識。
一方、青色事業者特別控除が65万円計上できることも(もちろん、基礎控除38万円も加わりますから合計103万円)よく知られた話。
結果、年103万円を月辺りに均すと、85,833円/月。
この8万円台半ばという数字を、
・「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を出している場合の88,000円(月額)未満無税(給与所得の源泉税額票甲欄)と近い。
・国民年金満額約78万円を12で割ると 65,000円/月程度。なんじゃあ、このお粗末さは!
という視点で認識できた方は、税金に関するアンテナ感度の鋭い方です。
つまり、物価の安い田舎暮らしか都会生活か、扶養家族が何人かとかの個別事情は一切考えず、とにかく国民1人辺り月額8万円台半ばの手取りがあれば、それは所得税の対象外。
国がセーフティ・ネットとして関われるのは、税金を取らない「お目こぼし」部分だけで、あとは自助努力でやって下さい、というサバイバル・ラインが見えてきます。
給与所得控除と個人事業主控除
第<19>回に、
> どこで仕入れた数字かは覚えていませんが、日本人の9割は給料取りだそうで、
という話を書きました。当然、国民の9割が関心を寄せるであろう給与所得控除関連の解説はそこら中に見つかります。
しかし、個人事業に設定された控除枠290万円を話題に据え、それ未満の収入、それを越えた収入でも節税は可能か、といった視点の記事はあまりお目にかかったことがありません。
単純に計算すると、給与所得者の控除で、「360万~660万/20%+54万円」に当てはめると、
4,300,000(年収)×0.2+54,0000=1,400,000
4,300,000-1,400,000=2,900,000円
となり、
・課税年収430万のサラリーマンは、290万に対し所得税が課税される。
・収入-経費が290万の個人事業主は所得税が発生せず。
ということになります。
が、この比較は単純すぎて現実的ではありません。
実際にはここから社会保険料控除を考慮していかなければならないわけですが、ご存じの通り社会保険は都道府県により差があります。また、年齢により介護保険の対象かどうか、さらに勤め人か自営かは雇用保険の加入対象になるかどうかも関わってきます。
さらに扶養家族が居るか居ないかも関わってきますし、個人事業の場合はそもそも同じ430万の年収を得るのに、経費が幾らかかっているかの「初期算定基準」が個別事情となります。
仮に、極めて課税収入430万給与所得者と似たような個人事業主がいたとします。が、それでも権利的な背景とか法律的に擁護されるといった点では、勤め人の方が有利でしょう。雇用契約により労働法や雇用保険で守られ、有給休暇や勤務先が用意する福利厚生面の待遇なども期待できますが、個人事業主は、
「傷病で契約先の仕事が遅れた/即契約解除され収入先を失う」
というリスクと常に隣り合わせです。家庭を築き、子どもをもうけ、人並みの生活を運営していくには、とてもこのレベルでは不足でしょう。
家族旅行ひとつ取っても、有給休暇ではなく「休業中は稼ぎが減る」ことを織り込んだ前提で行かなければなりません。参考に、ネットから、
https://www.happy-souzoku.jp/souzoku-16745.html
を挙げておきます。
小規模企業共済等の自衛手段
給与所得者は厚生年金や雇用保険が強制加入となりますが、自営業者の老後対策としては任意加入の小規模企業共済があります。
最近制度の拡充が図られた確定拠出年金も同じような性格を持ちますが、共通するのは、
・手元からお金は出ていくが、非課税で簿外に資金(年金)を積み立てる
ことです。
限度額は月額7万円ですから、これまた単純に、
・430万(年収)-38万(基礎控除)-65万(青色事業者控除)-84万(小規模共済)=243万
この243万から、国民年金 196,080円(平成30年、16,340×12)や国民健康保険(仮に介護保険も含めて月2万×12=24万とする)を引くと、残りは199万円余り。
さらに、居住地域により差異のある住民税があるので、あまりこれ以上の精度は詰められませんが、給与所得者に認められている控除140万との差額が約59万円。
もし、430万の年間家賃収入があったとして、第<22>回で述べたように経費率が35%だったとすると(年間の固定資産・都市計画税も含む)、1,505,000 円。
199万円との差は485,000円ですから、コピー機のリースだとか、通信費(電話、ネット接続)だとか、サイトを構えていれば維持費(サーバーのレンタル費用、制作会社への費用など)を計上していけば、十分課税所得ゼロに追い込めるでしょう。(住民税は考慮していません。というより、この485,000円から捻出します。)
赤字が出れば繰り越せますし、金融機関の手前黒字はキープしたいとなれば、前回(第<24>回)も触れましたが、資産税の納期を年内に払うか敢えて年明け1月を越えて払うかで調整できるような範囲と思われます。
が、これでは基本生活費が全くありません。個人の生活費(自家消費)部分を290万の控除内とすると、あと370万円くらい元々の収入アップが必要です。
3,700,000×0.65(経費35%を差し引く)=2,405,000
2,405,000+485,000=2,890,000
不動産経営関連の諸々の経費を差し引いた後の289万円ですから、12で割ると24万/月ほど。
潤沢ではありませんが、手取り額なので、子どもの教育費(何人かにもよりますが)も含めて、贅沢をしなければ何とか遣り繰りはつくかな、と思われます。
過去に、「サラリーマン大家が目指すべきは無借金家賃年収500万」(第<03>回)と書きましたが、これは勤務先が徴税処理をしてくれている場合の話。上述で計算した430万+さらに370万=800万は、個人事業主としての大家が目指す家賃年収かも知れません。
もちろん、無借金前提ですし、退去空室等の収入ダウンを織り込むと、安心ラインは1000万でしょうかね。
なるほど「うまくできている」
税制は頭の良い人が作っているので、原価償却の定率・定額法にしても、ローンの元利均等・元金均等にしても、最後に税金まで視野に入れてソロバンをはじくと、総じて取られる税金は同じような納税額に辿り着く、という話をどこかのセミナーで聞いたことがあります。
今回、算定の根拠にした65万(給与所得控除と青色事業者控除)と個人事業主控除の290万を使って、ザックリとした試算をしたわけですが、恐らく税制を考える人たちには、昨年(2017)暮れに議論された、
・基礎控除を48万に引き上げ
・年収850万円のサラリーマンは増税
などの話題も、「経験的感覚的に、国民があまり反発をしないであろうボーダー・ライン」をその筋の専門家は知っており、そうした税務官僚の提案を受けて税制大綱などが作られていくのかも知れません。
例えば、橘玲氏の著作などで紹介され、あちこちで引き合いに出されるカーネマン教授の「年収と幸福感の比例度合い」についての研究などは、ちょうど昨年の増税対象にされた年収850万と符合します。
確か、2017年暮の議論では、増税対象当初800万が850万に変わり、線引きの攻防で「その50万が重要だ」というような論が交わされたように記憶します。
ついでに触れると、上述の給与所得控除65万円も55万円に引き下げられます。850万円の線引きばかりが話題にされるのでひっそりと進行しますが、今のところ社会保険料との関連は調整されていません。つまり、103万円の壁の次に控える130万円の壁が120万円に引き下げられ、これまで若干の所得税は払いながらも、社会保険料は逃れていたゾーンの人たちが、その10万円の差を知らずに「えっ? 何で健康保険料の納入通知が来るの?」と慌てる可能性があります。(この記述は2018.9現在。)
所得税より社会保険料の方が比率は高めですし、地方自治体の徴収は住民税と同じ前年の収入を算定の基礎としますから、2年くらい経ってから大騒ぎとなり、「ちゃんと対応します」と閣議決定しても実施はさらに2年後とかになり、通算3~4年分、財務省は下々から広く薄く、でも数は多いので「たんまりと」税収を上げる。マイナンバーが本格的に稼働し始めますから、その間に個人の収支はしっかりと補足され、
「税と社会保障の一体改革って、結局年収1000万以下の人たちの収支を、悉く隅々まで補足するためだったのね。」
という事態になりかねません。そして、源泉徴収制度を絶対に捨てない行政が、マイナンバーを機能させて得た98%以上の国民の懐具合、言ってみれば「お上の調達先情報」を捨てるわけがないのです。(おお、怖い!)
まあ、この辺にしておいて、今回は「そこそこの年収430万」が、勤め人も自営業者も同じようなポジションに位置するのではないかという、「貧困ではないけれど、そんなに優雅でもない」イメージを提示するにとどめておきます。
筆者の場合には、不動産経営の他に、一般事業がありますから、パソコンやら書籍購入やら時に接待費や臨時アルバイトの人件費まで経費を計上可能ですから、上述の数字よりもう少しだけ、上積みの節税が可能です。
がしかし、現実には個人事業の年収は400万程度に抑えており、徐々に物件(収入の源泉)を法人に移しています。
次回は、もう少し収入が上がった場合と、法人も視野に入れた収支管理について述べる予定です。
公開日:2018年9月7日
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