サラリーマン大家と個人事業主の違いは?法人も視野に入れた遣り繰りについて~結果としての節税あれこれ~

職域年金受給1年前となり、やっと「少しはラクになるかな」と、一息吐いています。サラリーマン大家→個人事業主→会社設立と、書けば順調に見えるものの、「いつもカツカツ」で生きてきた気がします。これまでの経験を、節税面から振り返ってみようと思います。
前回(第<25>回)ちょっと触れた昨年(2017)末の税制改正議論(平成29年12月22日閣議決定 概要は本文冒頭に政府発表の URL を記載) ですが、やはり前回触れたカーネマン教授の「年収と幸福感の比例度合い」と個人所得税の増税部分(年収850万)が一致するという話。
今回は、そのことを意識しながら、法人も視野に入れた遣り繰りについて考えてみたいと思います。
<26> 収支管理(家計簿)ソフトは必須(3)
(承前)
※ 2017年暮の税制大綱の概要
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2018/30taikou_gaiyou.htm
筆者が折りに付け思い起こし、「何処にやっちゃったかなあ」と捜している資料があります。市民講座だったか、社会福祉系の勉強会だったか、投資関係のセミナーだったか、ちょっと記憶が途切れていますが、用意されていた資料が、日本の世帯年収別に消費動向をグラフにしたもので、恐らく総務省などの統計データを元に作成したものと思われます。
本来、こうしてコラムに書く以上、何としても出典を捜し出し、根拠を提示しながら話を進めるべきですが、お許し下さい。少なくとも自分の年収や、同期でまだ勤め人をやっている友人の年収なども思い浮かべながら、結構読み込んでの印象です。
筆者なりの結論としては、
・年収500~700万のゾーンは、自家消費も比例して増えていく。
ということを強く感じ(読み取り)ました。
消費の中には、子どもの教育費もカウントされますし、レジャー関連の費用も集計項目にありました。
そのすべてが、年収700万円くらいまでは、一貫して伸び続けるのです。皮肉な言い方をすれば、前回触れた「貧困ではないけれど、そんなに優雅でもない」状態を自己認識し、
「税込年収450万は御の字だから、以後は1割程度を貧しい人に寄付」
なんて考える人は、少なくとも日本には殆ど居ないだろうということです。そうした考えは、底流に宗教的な背景を持っていたり、社会的にボランティアやフィランソロピーの精神が息づいているとか、寄付に対する税制の控除が行き渡っているなどの条件が必要です。
日本は、貧困層と言われる人たちが、制度に従って税金や社会保険料を払っても、国民年金や生活保護で受給できる額が払った額よりマイナスになるという、「富の再配分が機能していない」世界で唯一の国です(年越し派遣村の頃の話で、10年経った2018年現在は多少改善されているかも知れません)から、
「ちょっとでも収入が増えたら先取りで自家消費に」
というのは当たり前の行動です。
ただ、人間というのは哀しいもので、
・子どもに習い事をさせよう(と言っても、共稼ぎじゃないとやっていけないが、学校が終わってから親の退勤後帰宅までの時間帯を安全に過ごさせるためには、児童館は収入制限があるし、仕方ないから習い事でもさせるという結果でしかない)。
・夏休みに子どもが家に居るとゲームやTVばかりだから、展覧会に行ったり、自由研究の足しになるイヴェントを捜して付いていってやったりに費用がかかる。
などなど、出ていくお金は散財でこそあれ、子どものために有効に使っているとか、「こうして親子でどこかに丸○日ドップリと過ごせる幸せな境遇」を感じる余裕はなく、「早く9月になって学校が始まってくれないかしら」みたいな感情が先行します。
恐らく、カーネマン教授の「年収75,000ドル(アメリカ人の場合)までは、収入増に比例して幸福度の実感も上がるが、それより上では必ずしも比例しない」という説は、日米の物価が似たような情況にあり(俗に言う成熟社会? 1ドル110円とすると、75,000ドルは825万円)、
・教育もレジャーもそこそこに消費して、まあ、不足はないかな。
という生活レベルのラインが800万円。しかし、前(第<25>)回試算した個人事業主でも800万でやっと24万/月の手取りですから、中小企業や個人事業主の反発を避けるには、アメリカの825万よりさらにもう少し上乗せして850万の線引きにすれば、「従順な国民」は文句を言わないのではないか?
シャウプ勧告を無視して源泉徴収制度を取り続け、年末調整で給与所得者の痛税感を麻痺させ、世界的にも優遇されている給与所得控除を人参としてぶら下げて増税のやむを得ず感を演出する。しかも、850万という年収の根拠も、この3回(<24>~<26>)のコラムで触れたように、「ふーむ、なるほど」的な狙い撃ちに収めている。
税務官僚という人たちは、恐らくその辺りの「反発が出ないであろうライン」を常に意識して、隙あらば増税を実現させようと日々切磋琢磨して(言い換えれば虎視眈々と)、世界のデータ比較や各種統計と取り組んでいるのでしょう。
平成30年度税制改正の虚々実々は、前(第<25>)回触れた「給与所得控除最低控除額55万へ引き下げ」の推移もしっかり見届けるような監視眼が必要です。
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ここでお遊び。お時間のない方は次の二重破線(===)に飛んで下さい。(破線----ではなく二重破線です。)
城主:誰(たれ)かある! 誰かおらぬか?
家老:は、いかがなされましたお殿様。
城主:今、勘定方から聞いたが、財政の遣り繰りが付かぬとか。
家老:は、今年の猛暑(H.30)で作付けが思わしくなく、収穫も細いかと。
城主:それは分かる。それより現金の方も底を着くとか。
家老:はは、園遊会(オリ・パラなど)で思いの外、出費が嵩みまして。
城主:どうするつもりじゃ?
家老:年貢の取り立てを強化するかと。
城主:いや、ならん。一揆でも起こされた日には、却って被害が広がる。むしろ、四公六民を3.5公6.5民にしてやるのだ。百姓はそれでありがたがるからな。農民は生かさず殺さずじゃ。マイナンバーを使えば、いつでも取ろうと思えば取れるしな。
家老:は、しかしそれでは城中の遣り繰りがますます厳しくなります。
城主:それを考えるのがおぬしの役どころではないか。市中にはたんまり貯め込んだ商人もおろうが。
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処替わって某料亭。
商人:どうなさいました御家老様? お呼び頂ければ馳せ参じましたものを。このような場所に自らお出向きとは。
家老:うむ、屋敷ではちと憚られる話でな。耳を貸せ。xxxx……。
商人:そのようなご無理を! 今年になって既に○千両御融通申し上げましたが。
家老:分かっておる。ただな、今年の猛暑で作付けが思わしくないのもあってな、一揆も起こりかねん。どうじゃ、お前の処の金蔵には米もあると触れてもよいのだぞ。
商人:滅相もございまいせん。一騎打ち壊しなどに遭ったら堪ったものではございません。で、いかほどご用立てすれば?
家老:話が分かるではないか。そうよの、○千両もあれば……。
商人:またまたご無理を!
家老:ほう、そちのところには随分と助けられておるから、「心がけ殊勝である」と名字帯刀の御下賜に推挙を考えんでもないのだがな。
商人:本当でございますか!(嬉)
家老:うむ、ただその場合は貸付ではなく献納(政治献金)という扱いになるがな。
商人:はいはい結構でございますとも。名字帯刀が頂けるなら。
家老:それとな、推挙には担当の部署に鼻薬が要る。袖の下をな。
商人:いえ、最近改め方の吟味が厳しゅうございまして、直接の金員は出しかねます。
家老:ふむ、ではどうする?
商人:こういうのはいかがでございましょう? 手前どもで扱っている南蛮からの到来品は、向こうの商社が見本品なども同梱してくるのでございまいすよ。発注受注品以外はどう扱おうと自由ですが、オランダやエゲレスの嗜好品ならいくらでも金を出すという買い手はおります。また、長い航海に耐えられるよう結構な梱包がされておりますが、ギヤマンを包んでいる欧文文字が書かれた紙なども、蘭学を学ぶ医学生などは欲しがります。
家老:うむ、それで?
商人:そうした到来物は、危険思想の文書だったりする可能性もありますからお上の方針として検品・検疫などの改め所を作るのでございますよ。
家老:なるほど。
商人:もちろん人は要りますが、雇う費用も捻出できます。さっき申しましたとおり、高くても金を出す買い手はおりますから、上乗せした売却益から人件費を出せば良いのでございますよ。それで手前どもは損を致しません。
家老:なかなか考えるではないか!
商人:そりゃあ日々勉強しておりますから。で、改め所の指揮監督というお役目を御家老様に就いて頂き、お手当をお支払いすることにすれば、正当な金員をお渡しすることができます。
家老:悪い話ではないな。
商人:そうでございますとも。さすれば、御家老様がもう少しお歳を召されてご子息に今の地位を譲られても、引退なさった御家老様はの改め所は手前どもの所轄でございますから、引き続きお残り頂いてお手当をお支払いすることができます。
家老:おお、そうか! おぬしもなかなか頭が良いではないか。
商人:ええ、それはもう、御家老様とは先々までご贔屓にして頂きたいのでございますよ。ただ、この話、是非とも手前どもの独占で、他の店には同種の商いをさせないという方針で願いますよ。
家老:分かっておる。越後屋、おぬしも悪よのう、ふぉっふぉっふぉっ。
な~んて、低俗な時代劇さながらですが、
・お上(行政)の権威振りかざし
・金のあるところには無心と利権が蠢く
・下々(800万未満)にはアメ、少数意見(850万以上)は無視
・大資本には名字帯刀をちらつかせ(現代で言えば、デベロッパーに対して再開発地域の容積率緩和などで儲けさせるとか)
・改め所を作り賄賂を巧妙に隠し(現代で言えば、天下り先の創設や維持確保)
・結果として中間層(850万ゾーン)搾取で「格差」はどんどん広がる
とでもいった構図は、多分平安時代の荘園制の頃から、連綿と姿形を変えて1000年以上も続いているのでしょう。
筆者の妄想めいた時代劇でした。(笑)
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法人(プライベート・カンパニー)の存在意義
当連載コラムは、各回のタイトルにリードが付いていますが、その文章は筆者が書き、やや大きめの太字で書かれたキャッチは編集部で付けてくれます。第<07>回のキャッチは、
・所得税の節税対策としてのプライベート・カンパニーを運営
となっていて、筆者も「なるほど」と思いました。
その次の第<08>回では、
> 何のことはない、書き出してみればどこの本にも書いてあるような
項目を述べたわけですが、法人の収支管理については、この第<08>回で挙げたような「違い」を意識してマネージメントなさってみて下さい。当コラムのアクセス・ランキングに照らし合わせ、法人の運営については具体的な数字を挙げての話を控え、安っぽい時代劇もどきを遊ぶに止めます。
サラリーマン大家→個人事業主→法人設立とやってきてみて、ひと言で一番印象に残る違いは? と訊かれたら、
・サラリーマン大家と個人事業主の違い(妙味)は減価償却費の扱い
・個人事業と法人の違いは、分離課税の扱い
と答えます。
税理士の中には、
> 法人化する最大のメリットは、所得が分散できること
と言い切る方もいますが、筆者の場合は無人会社なので、課税所得を分離前に損益通算できる部分に魅力を感じます。
もう少し規模の大きな運営をしていれば、扶養家族を算入したり、社会保険の面で有利な展開の仕方もあるのでしょうが、まあ、投資家個々人のスタンスですから「我が道を往く」ということです。
公開日:2018年9月12日
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