適度な規模、身の丈に合った投資とは?K%(ローン定数)から見る不動産賃貸経営 追加投資か?一部繰上返済か?~結果としての節税あれこれ~

職域年金受給1年前となり、やっと「少しはラクになるかな」と、一息吐いています。サラリーマン大家→個人事業主→会社設立と、書けば順調に見えるものの、「いつもカツカツ」で生きてきた気がします。これまでの経験を、節税面から振り返ってみようと思います。
今回の話は、融資を利用していないと成立しないので、読者の皆さんの中には「俺には関係ない」とおっしゃる方もいるかも知れません。
ただ、住宅ローンなどにも活用できる視点ですし、お付き合いいただければと思います。
<41> K%(ローン定数)のこと
貯金一辺倒だった日本人が、少しは投資に目覚めているのか、専門用語が飛び交うことがあります。
RoE(return on equity)や、RoI(return on investment)などは株式投資でも顔を出すようになり、会社の成長性や事業効率を測る要素要件などが意識されるようになりました。
ただ、金融機関は株をやりたいからといってお金は貸してくれないわけで、融資前提の指標はなかなか市民権を得るには至っていないようです。が、一般的なサラリーマンでも自宅購入にあたっては長期のローンを設定するのが普通ですから、
「借金を抱えている身がどんな振る舞いをすればいいか」
という価値観は知っておいて損はないでしょう。
よく話題になるのは、金利差がどれくらいあれば借換えは有効かとか、一部繰り上げ返済は返済期間短縮と返済額圧縮とどちらが有利かとか、金融機関によって与信の基準がどう違うか、といった話ですが、今回のK%はもう少し「日頃からの意識」につながるものです。
指標となる数値は、
年間返済元利額 ÷ 残債額
で導かれます。
例えば、500万円借りていて、毎月2万円(元利合計)ずつ返済しているとすると、
240,000(2万×12カ月) ÷ 5,000,000 = 4.8%
2年目は、残債が 4,760,000 円に減っていますから、
240,000 ÷ 4,760,000 = 5.042%
に上昇します。正確には毎月の返済毎に数値は変化するわけで、その点が上述の「日頃からの意識」につながるわけです。
あるいは、500万円の時に100万円一部繰上返済(返済額圧縮型)をすると、48,000円(4.8%)手残りが増える、476万円の時に100万円一部繰上返済(返済額圧縮型)をすると、50,420円(5.042%)と考えても構いません。以前(第<18>回)、
> 商売(事業)における一部繰上返済は、「返済額軽減型」が基本
を強調したのは、毎月のように変化する数値指標を睨むことができるから、という側面(「日頃からの意識」)もあったわけです。
また、借り入れの利用を考える際、レバレッジ判定という指標がありますが、
CCR(自己資本配当率)>FCR(NOI利回り)>K%
といった数値算出にも顔を出します。(今回はここには触れません。)
で、このK%が特に役立つのは、借入を複数建てている時です。
一般のサラリーマンは、自宅住宅ローン1本しか長期の借入など利用しないと言われそうですが、住宅ローンを抱えながらマイカーを買い換えて2本目の借入を走らせる人もいるわけで、期間の差はあれ「複数の借入を同時に抱える方」がそんなに珍しいわけでもありません。
担保価値さえあれば、そして事業計画が妥当でペイ(黒字)するものであれば、金融機関は融資を出します。(2019年の今は、かぼちゃの馬車事件もあって厳しい情況のようですが。)
追加投資(リスク・オン)か、一部繰上返済(安全性の確保)か
例えば、3つの物件を借入利用で運営していたとして、A・B・C物件がそれぞれ、6%、7%、8%のK%だとしましょう。
仮に余裕資金が120万円手元にあったとして、これを一部繰上返済に使ったとします(返済額圧縮型)。
Aに返済すれば(手数料等は無視)、年間72,000円(月額6千円)手元資金が増えます。Bであれば84,000円(月7,000円)、Cであれば96,000円(月8,000円)です。
40万円ずつ3物件に均して返すと、Aは年間24,000円、Bは28,000円、Cは32,000円ですから、合計84,000円手元資金が増え、B物件単体に繰上返済したときと同じですが、全部の物件で空室リスクなどが少しずつ軽減します。(手数料等は3倍かかりますがここでは無視しています。)
しかし、利回り10%の物件が出てくれば、120万円は自己資金(頭金)に充て、1.6%とか2%とかの融資が引っ張れれば、そっちを選ぶのもアリという選択肢が生じます。
もちろん、新たな物件を増やすということは、空室とか退去・現状回復や内装・募集費用なども発生するということですが、現有物件がうまく回っていて、そうした一時費用がまかなえるというのであればGOサインでしょう。
いやいや無理をして拡大路線を敷くより、繰り上げ返済に回して安全性を向上させる、という考え方とどちらが良いかを論じることにはあまり意味がありません。
筆者は既に還暦を過ぎていますから、あまり新たな借り入れを建てるというエネルギーは希薄です。そうした投資家の年齢や既に抱えている他の融資残債など、個人事情も絡んでくるからです。
空き担保を確保する
上述では単にK%の数字だけを並べましたが、その中身が次のような実情だったとします。
・A物件、年間返済元利合計600万円、残債1億円。(6%)
・B物件、年間返済元利合計14万円、残債200万円。(7%)
・C物件、年間返済元利合計80万円、残債1,000万円。(8%)
この内、B物件は小さなワンルーム物件だけれども、立地がよく、全体の部屋数も多くないので、戸辺りの土地値が結構高く付いていて、担保価値は500万円と査定されている。
そうした場合は、200万円を返してしまい、担保を外して新たな借り入れの共同担保用に準備する、という考え方もあります。手元に現金がなくても、200万円が500万円に化けるわけです。
つまり、重要なのは現金化されているかどうかは別として、資産が資産として生かされる場合。もちろん土地ですら「市場価格」として上下するので、高値掴みをしたり損切りをしたりしますが、どんな値が付こうが「資産価値」が付いていることです。
その点、乗用車のように減価償却期間6年でも、ベンツのように中古がそこそこの額で売れるなら資産になります。でも、減価償却期間4年のパソコンでは、新品2年後ではクズ値にしかならないでしょう。
資産と資金
不動産投資では、キャピタル・ゲインとインカム・ゲインという話がよく出てきます。前者が売却益、後者が家賃収入という認識で間違いはありませんが、資産がどう資金化されるかは、意識する必要があります。
端的なのは、自宅のローンも定年を迎えるまでに無事終わり、さあ、悠々自適の老後と考えても、どっこい固定資産税は再就職で下がった給料に合わせて減額してくれるわけではない、という現実があります。
俗に「資産家」と言われる人々の中には、地価の高い不動産をいくつも持っているが、高い固定資産税に苦しめられて、実生活は極めて質素で、つつましく暮らしているという方々がいらっしゃいます。
資「産」はあるけれども、だからといって潤沢な資「金」(主として可処分所得)があるわけではない人達、というのは実際にいるわけです。
では売って資金化すればいいじゃないか、と言う人がいますが、そこで出てくるのが譲渡税です。あるいは相続が発生したときにも、その時点での路線価で算定されてしまう、という現実があります。
株などでも、名義の書き換えは資産の移転という扱いを受け、事業承継の手法でも、「株価(つまり資産価値)を下げて節税策を施してから継がせる」なんてことが解説されます。
適度な規模、身の丈に合った投資
無借金の物件を持ち、世話無しの管理体制を敷き、そこそこの日常生活を送れるだけの収入があり、いざというときの入院費用や通常の人付き合いに発生する冠婚葬祭の費用くらいは捻出できる。多分、老朽化して新たに建て替えるほどの余力はないかもしれないけれど、まあ老後の心配はさほどしなくてもいいかな。
そんなところが、おそらく個人の投資家が目指す第一段階ではないでしょうか。
不動産投資がブームの様相を示し始め、一般人にも知られるようになったとき、さかんに「年収○千万」とか「わずか○年で○億円の物件を取得」というような側面が強調されました。
しかし、融資の存在が極めて重要なこの分野では、物件の目利き、20年・30年を見据えた立地の推移、人口動態、投資家自身の人生設計、老後設計など、複雑な要素が絡み合います。おそらく金融機関ですら、20年・30年先のことなど分かってはいません。
ただ、上記「資産と資金」の違いと、その付き合い方、また借金も資産であるという認識をあれこれコントロールする必要が主じたときに、単純な「数値」に置き換えて冷静な判断を下す手助けとして、このK%という指標が、割と使い勝手がいいな、と筆者は感じています。
公開日:2019年12月10日
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