何かと煩わしい境い目の話2 入居者の再募集?売却?課税事業者から考える赤字覚悟で物件を持ち続ける理由 ~結果としての節税あれこれ~

職域年金受給1年前となり、やっと「少しはラクになるかな」と、一息吐いています。サラリーマン大家→個人事業主→会社設立と、書けば順調に見えるものの、「いつもカツカツ」で生きてきた気がします。これまでの経験を、節税面から振り返ってみようと思います。
何かと煩わしい境目(ゾーン)の話2
「物件を増やす=資産拡大」という考えは大原則ですが、そこに効率とか将来性とか、複数の場合はより有利な物件を取得するために敢えて現有資産を損切るとか、さまざまなノウハウがあります。
つい最近筆者に生じた事案を紹介したいと思います。
<37> 手放す(売却)か、持ち越す(再募集)か
筆者が持っているワンルーム物件の内、「機会があれば手放す第一候補」の部屋が空きました。
2月半ばの退去、募集時期としては既にオン・シーズンも終わりかけ。現状回復費用や工事期間などを勘案し、売却・再募集両面で検討を始めました。
検討事項の洗い出し
物件は法人所有でしたが、既に借り入れは無し。所有期間から計算した減価償却分を差し引くと、現況成約事例(相場)に照らして売却益が見込めます。
ここで、その期の収入をザッと見込んで、どんなことを考えなければならないか。
(1) 3月までの期締め前に売却できた場合、売り上げがどうなるか。
(2) 次期(4月以降)に売却成立の際はどうなるか。
(3) いずれの場合も、他の収入(特に課税対象部分)と合算して、消費税 の課税事業者になるかならないか。
(4) もし課税事業者になるとすれば、観念するのか、先々何らかの「諦めも付く」タイミングがあり得るのか。
(5) 賃貸継続とすれば、現状回復費用はどの程度掛けるか、利回りはどうか。
その他にも、2020年のオリ・パラの前後でどうなるだろうかとか、当該物件周辺の相場観はどう推移しているのかとか、金融機関の動向とか、考えればいくらでも考察の要素はありますが、しばし沈思黙考。
第<10><35>回で触れましたが、居住用賃貸収入は非課税なので、賃貸経営中はあまり意識せずに済みますが、ひとたび「売却」が生じると、建物部分の収入は課税対象となります(事業用資産の譲渡売却=事業収入)。
上述の内、筆者の場合(1)は論外。前々期に手放した区分物件の関係で、3月までは課税事業者になっていましたから、物件売却益などもっての外。みすみす消費税の支払いを自ら増やすようなものです。
(2)については、かなりブレのない収入見込みを立て、課税収入の予想を導く必要があります。
(3)以降については、(2)の見込み次第なので後述とさせて頂きますが、物件取得(資産拡大)の際あまり意識せずに済んだ支払消費税(物件の建物部分)のことが、手放す(売却)際にはにわかに重荷になります。
さて、区分物件のように土地と建物が一体になっている固定資産は、物件の売買に際して、購入者側は建物部分を大きめに取りたがり、売り手側は土地部分を大きく取りたがるのが一般的な傾向です。
投資家(買い手)にとっては減価償却費が大きく取れる方が先々にわたって有利であり、手放す方は土地部分の額が大きい方が(決済後の処理は別として)収入の源泉が多くなり有利だからです。
特に、平成10年以降、建物は定額法の減価償却しか認められていませんし、附帯設備関係も平成28年(04/01)以降は建物と分けて別途定率法で計算、という方法が採れなくなっています。まさに「利は元にあり」の大原則が建物額を大きくすることなわけです。
もちろん、当事者間の「自由契約の大前提」に基づいて、売買契約書に記載された金額が優先・有効とされますが、あまりに都合のいい数字は、例の「社会通念上」が「そうらお出でなすった」とばかりに顔を出してきて待ったをかけます。
例えば、RCの一棟ものマンションなどで、建物部分が5000万円を越えそうな場合、簡易課税による見なし仕入れ処理が認められなくなりますので、大規模修繕などの大きな支出でもない限り、仕入れの殆ど発生しない居住用賃貸不動産では消費税の考え方が根本から変わります。
ではどうするか、については「例え」で触れている話なのでこれ以上は踏み込みませんが、契約書に「記載される当事者」のこうした都合が勝手に一人歩きしないよう、歯止めの「待った」が税務署からかかり、その根拠となるのが固定資産税評価額や周辺同程度物件の取引事例などの数字です。
次期の収入見込みを見通す
上述の選択肢の内、(1)は対象外となりましたが、(2)については、なお売却/賃貸継続を判断しなければなりません。
取得時700万円ほどの小さなワンルーム区分物件ですが、他の事業収入もすべて洗い出して、収支の見込みを出します。
とは書いたものの、正直なかなかに面倒な作業です。
過去3~5年の収支の平均を出したり、ある年度にたまたま発生した修繕などを何年毎に発生しそうか予想して1年辺りに均したり、空室損を実績から設定して織り込んだり、租税公課や損害保険料料率のアップ見込みなど、「まあ納得できる範囲」に追い込んでいきます。
そこに、「もし売れたら」の建物売却益を加えるわけです。
すると、結果は課税収入10,012.000円余り。
つまり、僅か12,000円ほどのために、次期(2021)が消費税の課税事業者になってしまうことになります。
第<10>回で、筆者は、
> 課税年収部分800万円ほど。1000万を超えてくる部分は、居住用賃貸
と書いたわけですが、売却収入を繰り入れると、その基本方針(課税収入を1000万円以内に納める)を僅かに越えてしまうわけです。
もちろん、課税事業者になるのは売却をした年の2期後ですが、この「800万円ほど」は2年後も発生しているわけですから、12,000円飛び出たばかりに、64万円(800万円×8%、2年後は10%になっているので実に80万円!)払わねばならないわけです(仕入分の控除は考慮せず、また、簡易課税仕入れにするかもここでは触れず)。
では、上述の「自由契約」に基づいて、課税収入を1000万円未満に収めるべく、建物部分の額を調整可能かどうか?
細かい計算は省略しますが、残念ながら、取得時の投資額、所有時全期間の収支や利回り、投資効率などから考えて、設定できそうにありません。
また、この「12,000円で80万円を稼ぐ利回り(と言っていいのでしょうかね?)に匹敵する別の収入源は、他に見つけられませんでした。(まあ、当たり前ですな。)
今後の見通し、そして売却の判断とは
ついては、目先的には今回の売却は回避としたのですが、再度同じような場面が巡って来た時どうするか?
そこが
> 後述とさせて頂
くとした部分ですが、これも以前(第<12>回)に、
> 先々権利変換完了で新築物件取得後は売却予定
としている物件が他に控えており(法人)、こちらは必ず消費税課税事業者に再び返り咲くのが分かっている規模の売却なので、どうせならこの年に併せて売却(賃貸中、収入があったとしても)かな、とも考えます。
冒頭(リード文部分)で、
> 効率とか将来性とか、複数の場合はより有利な物件を取得するために
> 敢えて現有資産を損切るとか
と書きましたが、物件売却の判断は、投資家個々の判断でさまざまだと思います。
・借り入れの返済が重くて、他の管理費等の経費まで入れると足が出る。
・確定申告が面倒、税理士に頼むとしても日頃の収支管理が煩わしい。
・業者からの電話が煩わしく、イライラする。
などの投資初期の段階で手放す方がおられます。が、これまで述べてきたように、収入規模によっては、節税の観点から売却/所有維持を判断する場合もあるということです。
退去・空室のタイミングで売りに出すと、以前は買い手さんも、
・事前に内見ができるから良い。
・好きなように内装が加えられるから良い。
という考え方があったのですが、最近(2019)のように不景気だと、
・入居者付きでの引き渡しの方がすぐに賃料が取れて良い。
という意識に傾きつつあり、入居付けの決まりやすさ、駅近立地などの要素が以前よりシビアになっています。
ところが、実際の売り手事情はまさに「それぞれ」で、「税金対策のための調整売り」とでもいった場合もあるということです。
さらには、不動産に特化せず、さまざまなキャッシュ・ポイントを模索されている方の中には、
・いや、税率50%の事業税より、株の儲けは20%の分離課税で済む。
との立場を取られる方もおられ、むしろリートとか、もう少し規模の小さい私募債などに軸足を移すなど、
・ご自分が置かれたポジションや手持ち資金
・物件を担保に今後も投資拡大を狙うのか
・ご自身の年収や年金の有無
等々、そのスタンスはさまざまです。
そうした種々の選択肢の中に、課税の見込み、負担の見通し、納税準備のための現況、実行可能な対応策、などなどを見越していく必要はあるのだ、ということですし、そうした観点も視野に入れていけるようになりたいものだ、ということです。
その後の現況
2月に空いた物件は、以上のような考察を経て、あまり何でもかんでもの「てんこ盛り現状回復」ではなく、次の入居者さんが女性の方でも、まあそこそこに納得して頂ける程度の必要十分な内装を施し、シーズンを外れたためやや手間取りましたが、無事6月には次の入居者さんに賃貸中です。
おそらく、物件単体としては、今年度はマイナスになると思われますが、「それでもいいや」と思えるある程度の「数」を所有して、他物件も含めたトータルで収支を考えています。
筆者が初めて賃貸投資物件を取得してから、すでに20年以上が経ちますが、つくづく思うのは、この最後に書いた部分、
「ある程度の数の物件と付き合い、同時にその数だけ蓄積される経験を経てこそモノになる」
という事実・現実です。
数十万円程度の「勉強代」で済むなら、火傷が軽い内に早めに手仕舞うか、投資に資本投下を継続するという腹が括れるなら進むか、そんな判断を迫られることもどこかであったかな、と過去を振り返りながら今回は書きました。
売却ひとつを取っても、迷い、悩み、最善を模索して進む……。サルが知恵を持って人間になるというのは、こんなことの積み重ねなのかなと……。(笑)
投資を単なるギャンブルに終わらせるか、奥深い人生訓に育むかは、結局は本人次第であり、それなりの努力をしたかどうかを経て、初めて自己責任という言葉も意味を持ってくるような気がします。
最後は妙に説教臭くなりました。ゴメンナサイ。
公開日:2019年8月20日
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