賃貸不動産業での税務知識の利用実例 売却業者との会話で熱くならない考え方~結果としての節税あれこれ~

職域年金受給1年前となり、やっと「少しはラクになるかな」と、一息吐いています。サラリーマン大家→個人事業主→会社設立と、書けば順調に見えるものの、「いつもカツカツ」で生きてきた気がします。これまでの経験を、節税面から振り返ってみようと思います。
筆者は、既に売却してしまった物件も含め、管理組合理事長、監事、一般理事などをいくつか経験し、今も2・3の物件に関わっています。そのすべてにおいて、理事会で話題にならないことはないのが、
「売ってくれ、という業者から3日と空けず電話がかかってくるが、皆さんどうしてますか?」
というものです。
そんな時、税務知識を使う(出す)と、業者側の姿勢も見えてきます。
<27> 売ってくれ業者対応
業者からのコンタクトというものは、勤め人だった頃はDMは気になったものの、電話はそれほどでもないと思っていましたが、自営になって在宅の時間が多くなると、確かに電話の多さは「頻繁」と感じます。
勤め人時代は、早期リタイアを目指して物件獲得を進めていましたから、どちらかというと「買いませんか」業者の方が多かったでしょうかね? 買いにしろ売りにしろ、勤め先では「勤務中ですので」と、話を聞くまでもなく断りますが、ここ数年はたまに話を聞くこともあります。
今回のコラムは、直接的な実務につながる話題ではありませんが、不動産経営を管理会社任せの放ったらかし投資にせず、それなりに取り組んで知識を持てば、電話営業もそれほどウンザリせずに済みますよ、というお話。
実際には、
「○○(立地)にお持ちの△△(物件名)ですが、弊社のお客様で○○辺りを限定して物件をお探しの方がいらっしゃいます。相場より多少高くてもいいと仰言ってるので、お値段次第ではご売却をお考えになりませんか?」
というトークが多いですかね。
筆者の場合の応対を、いくつか挙げてみましょう。
1.「今年は消費税の課税事業者になっておりまして、売却で益が出てしまうと、ガッポリ取られちゃうもんですから、動かせないんですよ。期が変わればまたフェーズもかわるんですが。」
ここで「今年は」という言い方には結構意味があります。
通常の一般常識では、「今年」は暦年(01~12月)、「年度」は04~03月と想起することが多いと思います。この(1.)の筆者の応答に対し、
「ああ、じゃあ来年の1・2月にならないと、ということですか?」
と業者が返してきたら、「ははあ、個人事業者(あるいはサラリーマン)を想定しているな。」と分かります。そこで筆者は、
「ええ、まあ、消費税の納期限は3月ですから、4月以降ですかね。」
などと応えます。
法人は、会計年度を任意に決められますから、
「いえ、ウチは3月決算なので、資産の売買のような額の大きい取引は、5月に申告して税理士の報告を受けてから方針を決めていきますので、8月頃にならないとこうしたお電話には応じかねますね。」
という答え方をするときもあります。
2.「昨年も一昨年も、物件を動かしていますから、頂いたお電話を無碍なく問答無用で切るようなことはしないのですが、決算や申告の時期というのがありましてね。当方は3月締めで5月に申告が終わると、税理士と相談しながら方針を打ち出していくので、売却にしても買い増しにしても組み替えにしても、夏頃から検討を始めて、実際に決済をするのはほぼ例外なく秋なんですよ。従って、どんなに破格のお値段を提示されても、すぐには応じません。」
電話営業の業者というものは、話すらできないで切られてもダメもと、すぐ切られてもめげずにかけ続け、ちょっとでも欲の片鱗を嗅ぎ取るや、「札束を積み上げれば落ちる」と思って粘ります。
「相場より高いって、どれくらい?」
などと聞き返すことは御法度です。
(2,)の応答に、ある種律儀というか、
「いつぞやお電話差し上げたことがあります□□(業者名)ですが、夏以降の検討、秋に方針が決まるとお聞きしていたので、その後いかがかな? と思いまして。」
などと電話が来ることがあります。
筆者は、こうしたコンタクトをそんなに煩わしいとは思いません。
(ほう、よく連絡してきたな。)
と感じます。
ただ、じゃあ、と物件を手放すようなことはまずなくて、
「ええ、その後税理士とも相談して、今年は動かさないで不動産はお休みしよう、と方針を決めております。」
などと応えることが多いですかね。
稀に、上記(1.)のような場合にも、
「じゃあ、組み替えで新規の物件を取得されたらいかがですか? 同じ年度なら売却益と新規取得費用が相殺できますから、節税も効きますよ。」
などと提案する業者もいます。
(ほう、ちっとは税金のことも分かってるらしいし、仲介・転売とかだけでなく、物件の紹介とかも手掛けるのかな。)
とも思うのですが、
「いやあ、結局、新規物件を仕込むと、登記料や司法書士の費用とかのイニシャル・コストの回収で、すぐ2・3年はかかっちゃうでしょ。それをじっくり待って、っていう程はのんびりしてられないんですよね、歳も歳だし。」
などとかわします。
業者対応というのも、一種の慣れで、
・先ず、自分のスタンスや短期、中長期の見通しを認識しておくこと。
・単に物件を右から左に動かして業者の仲介手数料だけが動くことには眉に唾をつけて聞くだけに止める。
・「そちら(業者)は物件を仕入れてどこかに売れば、仲介手数料を稼げていいかも知れませんが、当方の税金まで考えたフォローをやってくれるんですか?」と訊いてみる。(ただしこれに応じると言った場合は、「資産状況をお知らせ下さい、提案をしますから。」となり、結果的に個人情報を吐き出させられますので要注意です。)
などと遣り取りすることで、相手(業者)側のスタンスやポジションも見えてきます。
呆れるのは、6・7年前に売却した物件を名指しして、
「お持ちの△△ですが……、」
などと問い合わせてくる場合があります。
「いつどこから仕入れられたデータか存じませんが、その物件はとっくの昔に手放しておりますので、私にはお答えのしようがありません。ちゃんと最新の登記情報をお確かめになった上で、現在の持ち主にお問い合わせ下さい。」
と応えます。
図々しいのは、
「あー、もうご売却されていましたか。他に何か物件をお持ちじゃないですか?」
などと訊いてくる輩!
「貴方は、△△の物件について、よく調べもせずお問い合わせになったんですよね。そうした怠慢を棚に上げて、いきなりガチャンと切られなかったことをこれ幸いに、あわよくば労せずして最新情報・更新情報を引き出そうというのは虫が良すぎますよね。」
と即切りします。
・相手(業者)が真摯な姿勢をを持っているか、
・ただ店の方針や上司からのノルマ消化で「数打ちゃ当たるかも」程度で電話をかけてくるのか、
・クライアントや投資家と誠実に向き合う姿勢を持っているか、
・初期費用の回収や保有期間中の税務対策など、取得から売却までを視 野に入れた、云わばコンサル的な対応ができるか、
などのニュアンス(雰囲気)は、ちょっと話すと見えてきます。
筆者は、別に buy and hold を信条にしていません。過去のコラムでも(第<17>回)、
> 35㎡程度の区分マンションを取得して数年後にキャピタル・ゲイン狙いの運用を手掛けたりもしています。
と書いたこともあるように、「取得したら持ち切り、ローンが終われば自前年金だ」というスタンスにしがみつくことなく、適宜売却や買い換え(組み替え)も織り交ぜて投資展開をしています。
ですから、「売ってくれ業者」の話も、「万が一食指の動く話があったら」と、いきなりガチャンはしないようにするのですが、その際、経理や税務の知識があると、比較的「熱くなったり」「必要以上に腹立たしい思いをしたり」「目先の買い取り金額に迷いが生じたり」することが少ないように思います。
結局その根底にあるのは、以前にも何回か触れましたが(第<10><19>回など)、不動産賃貸経営というのは「事業」であって、株やFXなどのペーパー・マネーとは違うということ。「値上がり、値下がり、含み益、含み損、損切り、等々」といった言葉は使うにしても、中身はやや異なる取り組みであり、「投資」という言葉に「放っておいても資産を増やしてくれる。銀行預金よりはましだろう。」との認識しか持っていなければ、失敗すら有り得ます。
売ってくれ業者の提示する札束に目が眩み、一時的に手元資金が増えても、譲渡税や所得税、額によっては2年後の忘れた頃に消費税課税事業者になるなど、「結局えらく出費を強いられた」という結果もあるわけです。
居住用不動産は非課税収入とは言え、いや、普段が非課税に慣れ切っいると、売却や諸手続費用も含めた収支・損益には油断をしがちです。
ヒマ人と言われればそれまでですが、業者の電話攻勢を、筆者は「たまに与えられた頭のトレーニング」と感じることもあります。
公開日:2018年10月11日
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