早めの対策が肝心!
大家さんのための事業継承のススメ

これまで自分なりの考えで色々学びながら大家業をしてきました。相続も含めて、将来的には息子に大家業を引き継ぎたいと思っているのですが、息子はこれまで大家業に携わったことがなく、私のように自分から進んでやりたいと思っているわけではないので、私がこれまでやってきたようにできるのか、不安です。
大家業を引き継ぐ際には、何からはじめて、どのように引き継いでいくのが最善でしょうか?

まずは大家業の事業状況を把握し継承する相手の状況も見ながら早めに着手することが重要
―― 大家さんが不動産経営の事業継承をするためにしておくべき準備には、どんなものがありますか?
ご子息に事業承継をするには、ご自身の大家業の事業状況を伝えなければならないので、まずは、事業状況を把握し、物件目録を含めた財産目録、借入れがあるのであれば、負債目録を作成しておきましょう。
また、過去の決算書の整理、所有物件の時価評価の確認、毎月の売上や経費の集計・分析を行い、事業としての現状を把握しておく必要もあります。
―― 事業継承をはじめる適切なタイミングはいつごろでしょうか?
事業承継には相応の労力と時間がかかりますので、可能な限り早期に事業承継の準備に着手することが望ましいと考えます。
ご子息がこれまで大家業に携わったことがないのであれば、様々な知見を承継してもらうには、なおさら相当程度の準備期間が必要になると思われます。
また、ご子息の家庭や仕事の状況も踏まえなければなりません。子育てや仕事に忙しいときに無理強いをしないように配慮する必要があるでしょう。
―― 事業継承のための後継者育成では、どのようなところがポイントになりますか?
ご自身の経営者としての方針を承継させたいのであれば、その理由を十分理解してもらう必要があるでしょう。
また、大家業(不動産賃貸業)のノウハウを承継してもらう必要がありますが、そのためには、承継が済んでリタイアする前に、少なくとも数期はともに実働して、経験や知識を間近で吸収してもらうことが必要かもしれません。
いずれにしろ、後はすべて任せたなどとして、放任するのはよくないでしょう。
―― 大家さんの事業継承において、よくある継承の失敗例などあればご教授ください。
十分な準備期間が取れず、ノウハウの承継が上手くなされなかったため、賃料滞納を放置してしまって、売上が減少し、資金繰りに困窮してしまったケースや、家屋の必要な補修等の対応をせず、賃借人から損害賠償請求を受けてしまったケースなどがあります。
また、特定の相続人にだけ承継をしたため、他の相続人から遺留分減殺請求を受けるなどして、相続問題が生じてしまったケースもあります。
『生前』の事業継承と『相続』による継承の違い
―― 「生前」の事業継承と「相続」による継承、それぞれのメリット・デメリットはなんですか?
一つの視点として税金面から比較すると、生前贈与(贈与税)の方が相続(相続税)よりも税率が低く、節税効果が見込める場合があります。また、生前贈与については、住宅取得等資金の特例など特例税率の適用を受けられる場合もあります。
他方、生前贈与の場合、不動産取得税が課税される、名義変更の際の登録免許税の税率が高い、税金の申告手続が煩雑であるなどのデメリットもあります。
―― それぞれ、どのようなケースに適しているのですか?
生前贈与は生存中に経営者が主体で事業承継を行うのに対し、相続は経営者の死後に相続人によって事業承継が行われるものですので、経営者の生存中にご子息等に承継者が決まっているのであれば、生前贈与を積極的に検討すべきでしょう。
生前贈与による場合、承継者以外の相続人に対するケアは必須で、承継者のみに不動産を集中させるのであれば、他の相続人に対する金銭的な手当などが必要になるでしょう。
―― 大家さんに向けて、事業継承を円滑に進めるためのアドバイスをお願いします。
事業承継は、弁護士による法律的な観点からだけではなく、税務・労務・登記等の横断的な専門知識が必要になります。
また、相続人が複数存在する場合は、将来的に、相続問題も発生しかねません。したがって、早い段階から、事業承継が円滑に行われるよう、検討や準備を進めていくことが重要です。

やっておくべき準備
事業状況を把握し、物件目録を含めた財産目録、借入れがあるのであれば、負債目録を作成。
過去の決算書の整理、所有物件の時価評価の確認、毎月の売上や経費の集計・分析を行い、事業としての現状を把握しておくことも必要。
事業継承のタイミング
可能な限り早期に事業承継の準備に着手することが望ましい。
ただし、子育てや仕事に忙しい時に無理強いをしないように配慮が必要。
後継者育成のポイント
自身の経営者としての方針を承継する場合は、その理由を十分理解してもらうことが必要。
数期はともに実働して、大家業の経験や知識を間近で吸収してもらうことが必要。
ご回答いただいたのは…

代表弁護士 櫻田 真也
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